言葉の散歩道



ことばの散歩道「ダヴィンチコード」(エピソード1)

 「ダヴィンチコード」(ダヴィンチの暗号)を観ました。ほぼ原作通りで、サスペンスとして見応えのある作品でした。内容が、レオナルドダヴィンチの描いた絵に隠されているとされる暗号や、宗教図象解釈学をめぐって展開していくだけに、映画は、小説とはまた違ったインパクトがありました。トムハンクスが主役を好演しています。主人公である宗教図象解釈学者ラングドン教授は、原作では「ハリスツィードのハリソンフォード」という表現があって、私もハリソンフォードのイメージの方がピッタリだったかなと思いました。それはともかく、作者のダンブラウンは、「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実に基づいている」と言っています。でも、それは全部本当かなって首をかしげます。別に、小説に目くじら立てて反対する気はないのですが、歴史的事実を歪曲した、誤った情報を読者に与えて、それを全て事実だと言い切っているところが、気になります。『よく言えるよな』って感じです。例えば、まず、物語の鍵を握る、つまり、ダヴィンチコードを隠し伝えているという「シオン修道会」なるものは、実際には存在しません。まして「1099年に設立されたヨーロッパの秘密結社」で、レオナルドダヴィンチや万有引力で有名なニュートンも加入していたという、もっともらしい事実もありません。確かに、「シオン修道会」という名称があった事実はあります。しかし、それは、ピエールプランタードという詐欺師が、1956年に、もう一人の男と組んで、金儲けのためにでっちあげたものです。2000年前の聖書に出てくるマグダラのマリヤの子供がフランス王室の代々の子孫になっており、自分もそうであると言い出し、それが裁判ざたになって、彼は刑務所に送られました。ダンブラウンは、その「シオン修道会」が密かに伝えている「驚愕の事実」として、キリストはマグダラのマリヤと結婚し、一人娘を儲けたと言っています。その根拠に「マグダラのマリヤの福音書」なるものと、もう1冊の文書を紹介しています。しかし、そのようなものも歴史的には存在しません。キリストの時代以降、時代がずっとくだるにつれて、聖書に書かれていないことで、そこがもっと知りたいという人々の関心に応えるような文書は、たくさん作られました。キリストは結婚したか?というような話題がまさにそうです。それらは、今日、外典文書と呼ばれ、実はそちらの方が聖書より好まれて、大衆文学として、人気がありました。ダンブラウンは、そのような外典文書こそ、真っ先に書かれたもので、真実のキリストを伝えているとし、今の聖書は、後代に教会がキリストを神格化して書いたものに過ぎないと断言しています。彼は自分の創作した「外典文書」を、事実として、小説の中にまぎれ込ませました。また、建築物にも事実でないことがあります。かのルーヴル美術館前にある総ガラス張りの逆さピラミッドには、悪魔の数字である666枚のガラスが使用されていると言います。しかし、事実は673枚で、悪魔と何の関係もありません。話を面白くするためにそうしたのです。次回はダヴィンチの名作「最後の晩餐」に隠された暗号のウソを解読したいと思います。それではシャローム(Peace be with you in Jesus.)   

                カルガリー日系人福音教会牧師 谷口洋一