言葉の散歩道



ことばの散歩道 知られざる皇室の紋章 「獅子と一角獣」(その2)

 以前、イスラエルを旅行したとき、古都エルサレムの城壁の門に、思わず声を上げてしまいました。ヘロデ門という門の上のほうに、日本の天皇家の菊の御紋のレリーフがあるではありませんか。皇室の紋章は、中央の小さな円とそのまわりに十六枚の花びらから成る、十六菊花紋です。その昔、平安京出土の古い時代の紋章は、中央の円がもっと大きく、菊というよりは、ひまわりの感がありました。それはまさに、私が見たヘロデ門の上にあったマークと同じもので、花びらの数までも同じなのです。

 イラクのフセイン元大統領(絞首刑になった)が、イラン・イラク戦争の時、ヨーロッパの記者が、大統領の腕にあるブレスレットを見て、そのデザインが十六菊花紋であるのに気付き、質問しました。「それは日本の皇室のものとよく似ていますが、何か日本と関係がありますか」するとフセイン大統領は「この紋章は、わが国の先祖が、世界最古の文明を築いたシュメール王朝時代に用いていた王家の紋章だ」と答えたそうです。つまり菊の御紋は、中近東あたりでは、王家の紋章だったんですね。それが、日本の王家ともいえる皇室に伝わったのは、やはりシルクロードの織り成すロマンの一つなのかもしれません。

前回(その1)では、皇室の紋章の図柄は、盾の中に菊の御紋と、その下に十二頭の獅子が描かれており、その盾を左右から獅子(ライオン)と一角獣(ユニコーン)が支えている。その獅子と一角獣の組み合わせが神社でも使われるようになって、狛犬(こまいぬ)になった。そのルーツは、そもそも、聖書に書かれている古代イスラエルのソロモン王の玉座の左右に置かれていた二頭のライオン像と、玉座の階段の左右に六頭ずつ置かれていた十二頭のライオン像が始まりだったということを書きました。しかし日本の狛犬には、外国にないユニークさが一つあります。それは、一方の狛犬(獅子)が口を大きく開け、「あ」の発音の形をしており、他方の狛犬(一角獣)は口を閉じて、「ん」の発音の形をしていることです。いわゆる「阿吽(あうん)」の形で、今では、すもうの仕切りなどで、立ち上がろうとする両力士の気持ち(息)がぴったり合うことなどに、「阿吽の呼吸が合う」などと使われる程度で、もう死語になっている言葉です。実は、この阿吽という言葉、語源は教会で使われている「アーメン」から来た言葉なのです。教会では、よく祈りの最後にアーメンと言いますが、それは、「この祈りは、真実でほんとうです」ということを言い表わすものです。聖書の原語であるヘブル語とギリシャ語で「真実」「真理」という意味です。「アーメン」は二、三世紀頃インドに伝わり、サンスクリット語で「オウム」(AUM・真理の意)という言葉に移されました。その後、「オウム」は仏教の密教に取り入れられて「あうん」(A UM)になりました。「オウム」という言葉は、カルト教団の「オウム真理教」が使ってから全く地に落ちてしまいましたが、聖書が言っている意味は、アーメン(真実)である方、イエス・キリストを言い表わした言葉なのです。イエス・キリストは「わたしはアルファであり、オメガである。万物の最初であり、その最後である」と言われています。イエスは「阿吽」なる存在者なのです。聖書自体も「初めに神が天地を創造した」に始まり「アーメン」で終わっている「阿吽」の書物といえます。聖書が「本の中の本」といわれる所以です。では、またシャローム(Peace be with you in Jesus

                   カルガリー日系人福音教会牧師 谷口洋一