言葉の散歩道



ことばの散歩道 「子育ては親育て」 その5 励まし

 ドロシー・ロー・ノルトの詩、「子供たちは、こうして生き方を学ぶ」から今日は、その5行目「励ましを受けて育った子は、自信を持ちます」を紹介します。

 「励ます(encourage)」という言葉は、英語では「勇気(courage)を与える」という意味を持っています。しかし、「ものをあげるにも上手下手」のことわざにあるように、勇気を与えているのか、それとも逆効果になっているかは、あまり考えないでやっているものです。

 ジャズの好きな人で、マイルス・デイビィス(1926-1991アメリカ・ジャズミュージシャン)を知らない人はいないでしょう。マイルスの父親は、息子も自分と同じ歯医者になってくれるものと信じていました。ところが、歯の治療に通っていたミュージシャン、エルウッド・ブキャナンはマイルズの父親にこう言ったのです。「先生、マイルスを歯医者にしちゃだめですぜ。あの子はミュージシャンにならなくちゃ」当時中学生だったマイルズはブキャナンからトランぺットを教わり、高校でも、厳しい指導を受けながら楽団で演奏していました。彼の演奏を聴く人は、みな彼には天性の才能があると言いました。ブキャナンの出す音を真似ているマイルスに、ブキャナンはこう言いました。「おいマイルス、なんでもかんでもビブラートをかけるんじゃねえ。震わせたりゆらしたりするのはやめるこった、歳を取りゃどうせ震えてくるんだからな。まっすぐに吹け、自分だけのスタイルを見つけろ」「有名人の子供時代」(文春文庫)

 成功者の陰に、励ます人ありです。マイルスの場合、良き師に出会ったというべきでしょう。励ましが、単にほめ言葉と違うところは、マイルスが必要としていたことを、ブキャナンが実際的にサポートしたことです。

 また、時には手を出さないで、ただ見守るだけのほうが良いこともあるでしょう。例えば、小さい子供が洋服を自分で着ようとする時など、親がすぐ手を貸せば、早く着られるでしょう。しかし、それでは子供のためになりません。親が時間に余裕を持てば、気持ちにも余裕が持てるようになり、子供が自分で着るのを励まして待つことができます。

 次のような場合は、励ましが逆効果になります。親が、世間を見返そうとしたり、自分の見果てぬ夢を子供に実現させようと無理に押し付けるときです。そのためにいくら励ましても、子供の才能の限界に苛立って怒ってしまうなら、子供にストレスを与え過ぎて、やる気も自信も失わせてしまうでしょう。親が見る世界と子供が見る世界は、自ずと違うものです。一人一人にふさわしい才能が与えられているのですから。あなたの近くに、あなたの励ましが必要な人が一人いるかも。それではまた、シャローム(Peace be with you in Jesus

               カルガリー日系人福音教会牧師  谷口洋一