言葉の散歩道



ことばの散歩道 子育ては親育て  その6 からかい

 

 「からかう、ひやかす」という言葉は、残酷です。人をからかっておいて、「冗談だよ。ちょっとふざけただけじゃないか」と言う人は、ちょうどキャンプをしたあとで、まだくすぶっている焚き火をそのままにして帰ってしまうキャンパーのように無責任です。「からかう」という言葉は、ラテン語の語源では「笑う」からきています。相手をもの笑いにすることで楽しんでいるわけです。「笑い」には健康的な笑いと、そうでない笑いがありますが、からかいを受けた小さい子供は笑いの含む意味を、どのように受け取ってよいのかわからないので混乱します。心の中で、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもので、それが長く続くと、人間にとって大切な、自己重要感(自己評価)を低め、自分は大切じゃないんだと思い込むようになります。からかうことは、弱いものいじめをする罪です。

 ドロシー・ロー・ノルト女史の詩「子供たちは、こうして生き方を学ぶ」から、今月は、その6行目を紹介します。「からかいを受けて育った子は、はにかみ屋になります。」人見知りをする子はふつうにいますが、からかわれて育った子のはにかみは、それとは違います。第32代アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルト夫人のエレノア・ルーズベルトは、国連人権委員会の委員長として、世界人権宣言の起草にも関わった人ですが、彼女の回顧録は、こんな言葉から始まっています。「母ほど美しい女性を、ほかにあまり見たことがありません。」しかし母親本人のほうは、エレノアを友人や親戚の前で、「おばあちゃん」と呼び、「あなたはブスなんだから、行儀作法を身につけなくてはね」といつも言い聞かせていました。エレノアが8歳の時に母親が、その2年後に父親が他界し、エレノアは祖母と一緒に暮らすことになります。従姉妹のアリスは、彼女のことをこう語っています。「エレノアはいつも自分のことを醜いアヒルの子だと思っていましたが、本当は魅力的な女の子でした。すらりと背が高くていたずらっぽくて、明るい色の豊かな金髪が波のように腰までたれていましたし、本当に美しい青い瞳の持ち主でした。」「有名人の子ども時代」(文春文庫)

 しかし、未来のファーストレディは、母親から植え付けられたコンプレックスを決してぬぐい去ることができませんでした。エレノアの自己評価は、常に母の言葉が影を落としていました。心理学者ユングの言葉をひと言。「子どもの性格を変えたいと思ったら、まず自分が変わるべきではないかと考えなさい。」

 それではみなさんに平安がありますように、シャローム(Peace be with you in Jesus)             カルガリー日系人福音教会牧師 谷口洋一